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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

こんにちは。今回は少し変わって肝臓のお話です。

NASH(ナッシュ)という言葉はきいたことがありますでしょうか。これは脂肪肝が原因となり慢性肝炎を呈する病態のことを指します。

まず脂肪肝とは、肝臓の中に中性脂肪が蓄積して肝障害をおこす疾患です。脂肪肝をひこ起こす原因としてはアルコール性脂肪肝と、ほとんどアルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)に分かれます。またNAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。わが国にはNAFLDが約1000万人、NASHが約100~200万人いると推定されています。

脂肪肝である方はたくさんおられますが、NASHであることはどうやって診断するのでしょうか。脂肪肝自体は超音波検査にて簡単にわかります。脂肪肝に肥満、糖尿病、 脂質代謝異常、 高血圧など生活習慣病、メタボリックシンドロームを合併した患者さんは NASHであるリスクが高いと考えられます。 脂肪肝であることの診断は腹部超音波検査や腹部CT検査で可能です。 NASHの診断のポイントは以下の3点になります。

  1. 非飲酒者であること (アルコール摂取量1日20g*以下) *缶ビール(500ml) 1本、日本酒 1合、ウイスキーダブル 1杯程度
  2. 肝生検による組織像で脂肪性肝炎を認めること
  3. 他の原因による肝障害を認めないこと

現在、NASHの診断を確定する方法は肝生検のみです。肝臓に針を直接刺して一部肝臓の組織を採取する方法です。(基本的には病院で入院して行います)

NASHであると何が問題かということですが、通常の脂肪肝では肝臓が進行性に悪くなることはありませんが、NASHの場合は慢性肝炎となりゆっくりと進行性に肝臓が悪くなっていきます。そして慢性肝炎から肝硬変になったり、肝臓がんが発生したりするリスクが高くなります。

ではどういった治療法があるのでしょうか。残念ながらNASHを直接的に治療する方法で確立されたものはありません。ただ進行を抑えるためには以下の対処法が有効であると考えられております。

・生活習慣の改善 これからまず開始しましょう!

NASHの治療の原則は食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により、背景にある肥満、 糖尿病、脂質代謝異常、高血圧等を是正することです。

食事としてはジュースや甘いもの、アルコールは控える、野菜、豆類、青魚、ナッツなどを積極的に摂る、加工肉、乳製品、マーガリンなどは控えるといったことが挙げられます。

運動は有酸素運動(ジョギング、スイミング、サイクリングなど)と筋力トレーニングを組み併せてすることが有効です。

生活習慣の改善のみでは効果が不十分の場合は、肝硬変への進展や肝発癌を予防するために薬物治療も検討されます。

 1抗酸化剤:ビタミンC、ビタミンE

 2糖尿病治療薬:チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、シダグリプチン

 3脂質代謝異常治療薬:フィブレート系薬剤、エゼチミブ、エパデール

 4肝庇護剤:ウルソ、グリチルリチン

体内には鉄分を排泄する機能がないため、体内に過剰な鉄分があると肝臓や心臓などに蓄積され、肝臓の負担は大きくなります。肝臓に蓄積された鉄分は、肝臓の炎症を増悪させる可能性がありますので、鉄を除去する除鉄療法も検討されます。

 

脂肪肝がある方はたくさんおられ、そのまま進行もせず経過することも多いです。しかしどこかでNASHに移行しても特に自覚症状が出るわけでもないのでわかりません。ですから血液検査にて肝機能障害や血小板の数値を参考にしながら、慢性肝炎になっているか予想しつつ、また生活習慣病の合併や肥満などNASHのリスクがないかを検討し、疑わしければ肝生検を実施してNASHの診断をしていくという流れになります。以上より脂肪肝の方は定期的に血液検査や超音波検査を実施して経過をみることが重要となります。

 

 

豊中市西緑丘3丁目14ー8

みやの消化器内科クリニック

院長 宮野 正人