感染性胃腸炎
- 2022年8月4日
- 感染性腸炎(食中毒)
こんにちは。前回はノロウイルス感染症についてお話しましたが、今回は大まかな感染性腸炎のまとめです。
感染性腸炎とは体内に細菌やウイルスなどの病原体が腸管内に侵入し、増殖して発症する疾患です。病原体に汚染された食べたものから感染(経口感染)したり、病原体が付着した手で口に触れることにより感染(接触感染)したりします。1年中みられる疾患ではありますが、季節によって感染する病原体が異なります。主に夏には細菌性腸炎が、冬から春にかけてはウイルス性腸炎が多くみられます。
頻度として多いのが細菌ではカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、ウイルスではノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスとなっています。
症状は下痢、発熱、腹痛、嘔吐、血便などが見られます。下痢はほぼ必発ですが、その他の症状は病原体によって異なります。高熱を伴う激しい下痢の場合はカンピロバクター、サルモネラ、ロタウイルスなどが考えらえます。ノロウイルスは嘔吐、下痢が主であり発熱はないかあっても軽度のことが多いです。一方、ロタウイルスは発熱があり、その他下痢、嘔吐症状があります。強い腹痛、血便なら腸管出血性大腸菌(O-157など)を考えます。その他カンピロバクター、サルモネラでも血便が見られることもあります。
病原体に感染してから発症するまである程度期間があります。これを潜伏期といいます。主に原因となる食べ物もお示しします。特にウイルスは食べ物ではなく、感染者からの接触感染のことも多く、感染力がかなり強いです。特にカンピロバクターでは潜伏期が長いこともあり、1週間ほど前の食材が原因となることもあります。
潜伏期 原因食品
カンピロバクター: 2~8日 鶏肉、牛肉→鳥の刺身(特に生レバー)が多い
サルモネラ: 8時間~2日 鶏肉、牛肉、豚肉、鶏卵
腸管出血性大腸菌: 12時間~3日 牛肉→牛ユッケなど
ノロウイルス: 12時間~2日 二枚貝→生ガキが多い
腸炎ビブリオ: 8~14時間 魚介類
診断には詳細な問診が重要で、症状や発現時期、食事歴、周囲の人の様子、旅行歴などの情報を頼りに行います。通常、細菌を同定する便培養やウイルスのチェックまでは行いません。(培養の陽性率が高くないことと、基本的にどの病原体でも自然軽快が見込めるため)培養は結果がでるまでに1週間ほどかかりますので、それまでに腸炎が軽快してしまいます。
治療ですが、基本的には腸管安静です。脱水にならないように水分(経口補水液がよい)を十分に摂取して、食事も最低限として腸をできるだけ刺激しないようにします。一般的に感染性腸炎は自然治癒する傾向が強く、原則、対症療法(症状を抑えるために行う治療)となります。抗生物質は必要ないことが多いですが、細菌性が疑われ症状が強い方には使用します。整腸剤は腸内細菌叢を回復させるために使用します。下痢止めは毒素などが体内に吸収されやすくなり、症状が長引く可能性もありますので、原則使用いたしません。またブスコパンなどの消化管の痛み止めも同様に、腸蠕動を抑えることで体内に細菌やウイルスが停滞しやすくなるので使用は控えます。痛みに対しては一般的なカロナール、ロキソニンなどの痛み止めを場合により使用します。
予防のポイントとしてトイレの後や、調理・食事の前には石鹸と流水でしっかりと手洗いをしましょう。便や嘔吐物を処理するときは、手袋、マスク、エプロンを着用し、処理後は十分に手洗いをしましょう。カキなどの二枚貝や鶏肉を調理するときは、十分に加熱するようにしてください。
当院は消化器内科ですので感染性腸炎の方がよく来院されます。症状が強い方などは血液検査で白血球の上昇などを確認し、細菌性かウイルス性か判断します。(細菌性では白血球が上昇することが多いため)細菌性の場合は食べ物からの経口感染が多いですので、症状や食べたものでどの細菌かあたりをつけ、それに対しての抗生剤を使用します。原因の食材がわからない場合も多いので、そのときは広域の細菌に効果がある抗生剤を使用します。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人