ピロリ菌の診断、治療
- 2022年12月27日
- ヘリコバクターピロリ菌
前回ピロリ菌の話題に触れましたが、今回は少しつっこんだ診断方法と治療についてです。
前回お話した通り、ピロリ菌がいるかどうかを診断するためには胃カメラの検査が必須となっています。これはカメラをせずにピロリ菌だけ検査して治療することで安心し、肝心の癌の出現を発見できないことを防ぐためです。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌がいるかどうかの判定方法は複数個あり、内視鏡を使用する検査と使用しない検査に別れます。
内視鏡を使用しない検査
・尿素呼気検査
・抗体検査(血液検査)
・便中抗原検査
内視鏡を使用する検査(生検鉗子で胃粘膜を採取します)
・培養法
・迅速ウレアーゼ試験
・組織鏡検法
上記の6つの検査をそれぞれのケースで適宜使い分けて行います。時に2種類の検査で判定する場合もございます。
当院で実施しているのは主に、尿素呼気試験、抗体検査、培養法、迅速ウレアーゼ試験です。
簡単にいいますと、内視鏡検査とピロリ菌の検査はセットですので、内視鏡時にまず培養法かウレアーゼ試験を実施します。その検査が陰性であった場合で、かつ内視鏡的にピロリ菌がいそうな所見があった場合は、後日に尿素呼気試験を実施します。尿素呼気検査は手間はかかりますが、最も精度が高い検査になります。
胃酸分泌抑制薬(パリエット、タケプロン、ネキシウム、タケキャブ)を飲んでいる方は基本的にピロリ菌の検査結果に影響が出ますので、実施できません。ただ抗体検査(血液)は唯一、上記の内服下でも検査できますので実施することがありますが、精度の観点からは他の検査に劣ります。
またピロリ菌が除菌できたかどうかの判定には尿素呼気検査を実施します。
といったように用途や状況に合わせて使い分けて、検査を実施いたしております。
ピロリ菌の治療
これは現在ある程度決められた内服メニューがございます。
一次除菌薬
ボノプラザン(タケキャブ)+アモキシシリン+クラリスロマイシン 1週間内服
二次除菌薬
ボノプラザン(タケキャブ)+アモキシシリン+メトロニダゾール 1週間内服
一次除菌で90%程度の方は成功しますが、10%の方は失敗してしまいます。これはピロリ菌がクラリスロマイシンに耐性があることに起因しますので、二次除菌はこの薬を変更していたします。これでも失敗する方も一定数おられますので、これ以上の除菌(三次除菌、四次除菌など)は現在保険診療上、認められておりません。
当院では自由診療となりますが、三次除菌 ボノプラザン+メトロニダゾール+シタフロキサシン(グレースビット)で行っております。またこの加療はアモキシシリンにアレルギー(ペニシリンアレルギー)のある方で除菌加療ができなかった方にも安全に使用できます。
近年、昔にくらべて大分、ピロリ菌の感染者が減ってはきております。50歳以上の方ではまだ感染している方が多くなりますが、若い方でも、ご両親がピロリ菌感染があるそのお子様などは感染しているリスクは高いです。といっても、今の若い方が感染している率は低いです。これらの若い方が今後親になっていきますので、必然的にその子供の感染率も低くなり、全体的には経年的に低下していくことが予想されております。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人