虫垂炎
- 2025年6月25日
- 腸疾患
今回も前回に引き続き腸関連の救急疾患である虫垂炎についてです。
虫垂炎は世間一般的に「盲腸」と呼ばれております。「盲腸を切った、盲腸を薬で散らした」などいわれますが、これは虫垂炎のことです。盲腸というのは大腸の一番奥の部分のことを指します。虫垂はこの盲腸にくっついている細長い袋状の臓器です。
この虫垂に様々な原因により炎症が起こることにより虫垂炎を発症します。便の塊(糞石)やリンパ組織、腫瘍などが虫垂の入り口を塞ぐことにより、虫垂内部で細菌が繁殖して膿がたまって炎症を起こします。それにより発熱や腹痛が出現し、ひどい場合には腹膜炎をおこして命にかかわることもあります。好発年齢はやはり若い10歳~30歳代ですが、全年齢で見られます。一生のうちで約7%の人が罹患するといわれております。
症状
特徴的な症状としては右下腹部の痛みです。具体的にいうと臍と右上前腸骨棘(腰骨の前に出っ張っている部分あたり)を結んだ直線上の外側3分の1の点(=マックバーニー点)の圧痛です。痛みの特徴は鋭い痛みであり圧痛(抑えると痛む)のことが多いです。
典型的な虫垂炎の症状は、この右下腹部の痛みが来る前に別の症状が出現します。以下の順番で出現します。しかし半数はこのパターンには当てはまらないため注意が必要です。
①みぞおちから臍上のあたりの鈍痛
②嘔気、食欲不振
③右下腹部痛 ①→③まで数時間から1日かけて痛みが移動
④発熱(微熱~ない場合もあります)
診断
まずは問診、診察です。右下腹部痛があり、①②のような典型的な経過をたどっていれば虫垂炎を積極的に疑います。痛みがかなり強かったり、お腹が板のように固くなっていたり、刺激があると響くような痛みがある場合には腹膜炎になっている可能性があります。
血液検査では細菌感染に反応する白血球や炎症の程度を表す数値(CRP)が上昇していることが多いです。
画像的にはCT検査が有用です。虫垂炎の場合には虫垂が腫れていることや炎症の拡がりを確認できます。腹部超音波検査もありますが、虫垂が観察しづらく難しい場合もあります。
鑑別する疾患で頻度の多い疾患といえば、大腸憩室炎や感染性腸炎が挙げられます。大腸憩室炎とは憩室内に細菌が繁殖し、炎症を起こすことで腹痛を来す疾患です。ちょうど盲腸~上行結腸あたりには憩室がよくできますので、そのあたりの部位の憩室炎となると虫垂炎との鑑別は困難です。CT検査などを実施して診断をつける必要があります。また感染性腸炎(食中毒)でも右下腹痛が出現してもおかしくないので、判断に悩むところです。感染性腸炎の場合には下痢や嘔気・嘔吐、発熱、胃の痛みなど他の症状を伴うことが多いので診断の参考にはなりまが、虫垂炎を完全に否定はできません。
治療
虫垂炎の治療は大きくわけて2通りあります。
・抗生物質による治療
初期段階や軽症の場合には抗生物質で治療することができます。いわゆる「抗生剤で散らす」ということです。ただし再発することがあるので注意が必要です。入院にて治療することもあります。
・手術による治療
根本的な治療法で、手術により虫垂を切って取り除く方法です。重症化して腹膜炎を呈している場合には手術が必要です。また虫垂炎を繰り返すような方にも手術が推奨されます。
虫垂炎は放っておくと腫れた虫垂が破裂したり(穿孔)やたまった膿が周囲に拡がったり(膿瘍)して腹膜炎や敗血症など重症になることもあります。
治療の開始はもちろん早ければ早いほど重症にならずに済みます。
当院では問診や診察、血液検査を行い虫垂炎が疑われる場合は、CTなどの画像的な確定診断や治療を兼ねまして、入院ができる病院の消化器外科へのご紹介をさせていただいております。
右下腹部痛がある方やその他の気になる症状があれば早めの受診をお願いいたします。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人