胆道ジスキネジア
- 2025年10月15日
- 胆道病変
こんにちは。今回は胆道ジスキネジアという病気についてご説明します。あまり耳慣れない病気ですが、聞いたことはありますでしょうか。
「胆道ジスキネジア」は、胆のうが適切に働かなかったり、胆管の出口である乳頭の括約筋が適切に働かなかったりすることで、胆汁がうまく排出されず、胆道内に溜まることで、症状を引き起こす疾患です。この病気は胆石などの胆道系に目に見える病気がないにもかかわらず、胆石発作みたいな腹痛や嘔気・嘔吐の症状をきたす機能的疾患(臓器の働きの異常が原因となる疾患のこと)です。
胆のうとは、肝臓で作られた胆汁という消化液をためておく袋のような臓器です。本来は脂っこい食事などを食べた後に、肝臓から胆汁が作られ、また胆のうが収縮することで溜めていた胆汁も排出され、胆管を通り出口である乳頭から十二指腸へ排出されます。しかし胆道ジスキネジアになると、乳頭の括約筋や胆のうの働きに異常を来し、胆汁の流れがスムーズにいかなくなります。
明らかな原因はわかっておりませんが、自律神経失調などホルモン分泌異常や暴飲暴食などの食生活の乱れ、ストレスが考えられております。こういった原因は他の機能的疾患の原因ともなります。具体的には胃なら機能性ディスペプシア、腸なら過敏性腸症候群といった病態が挙げられます。
症状
-
食後(特に脂っこいものを食べた後)に、心窩部~右のわき腹あたりが痛む
-
吐き気、嘔吐がする
-
お腹が張る、重たい感じがする
-
背中や肩まで痛みが広がることもある
※胆石はないのに、胆石発作みたいな症状が出るのが特徴です。主に食後数時間後にでることが多いです。
検査
上記のような症状が出現した場合には、まず胆石など胆道系に目に見える病気があるかどうかを画像的に確かめる必要があります。それは腹部エコー検査やCT、MRIなどで簡単に調べることができます。しかし胆道ジスキネジアの場合にはこういった病気がないので、診断は難しくなってきます。血液検査にも異常を来すことはありません。
だから本当に胆道ジスキネジアか詳しく調べるには、胆道の収縮能を調べたり、胆道内の圧を測定したりする検査がありますが、一般的な検査ではなく、実施している施設も少ないので検査のハードルがかなり上がります。またこれらの検査を実施して、それらしいということはわかっても、診断の確定は困難な病気です。
治療
まず脂質を多く含む食事を控えて規則正しい生活習慣にしていただくということが基本になります。さらには体や心の調子を整えてストレスを取り除くことが大事です。薬物治療としては胆汁の流れをよくする薬を使用したり、胆のうや乳頭の括約筋の動きを一時的におさえるような薬を使用することもあります。まれですが内服のみでは効果がない場合には胆のうを手術で切除したり、内視鏡を用いて、十二指腸乳頭の括約筋を切開して胆管の出口を開いたままにしておくなどの処置が検討されます。胆のうの働きが悪いのか、乳頭括約筋の働きが悪いのか原因となる部位を調べてそれにあった処置が行われます。
この病気は知っていないと疑うこともできません。胃の症状とされて胃薬をだされていることも多々あると思われますが、胃薬は胆道系の病気には効きません。私も診療をしていて、胃の疾患ほど多くはありませんが、時々そうかなという方が遭遇するくらいの頻度です。症状も一過性のことが多く、ほとんど内服加療で軽快しております。手術加療まで進むことはまれであり、私自身はそういった患者様の経験はありません。しかしこの機能性疾患というのは、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群と同じように、命にかかわることはありませんが、一旦落ち着いてもまた何かのきっかけで再燃することもよくあります。一度起こった方は、次にならないように日ごろからの生活上の注意が必要になってきます。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人