胃酸分泌抑制剤の長期投与による胃癌発生リスク
- 2024年8月2日
- 胃癌,ヘリコバクターピロリ菌,上部消化管内視鏡
こんにちは。
近年、東京大学から胃酸分泌抑制剤の長期投与により胃癌発生リスクが上昇するという報告がなされました。
これらの対象となっているのは、ピロリ菌除菌後の方です。そもそもピロリ菌を除菌することで胃癌の発生がある程度抑えられておりますが、除菌後に酸分泌抑制剤を長期(年単位)に使用することで、胃癌の発生リスクが上昇し、用量が多ければ多いほど、また期間が長ければ長いほど高リスクになるというものです。
酸分泌抑制薬は普段から逆流性食道炎や胃痛などの上部消化管症状に対して非常によく使用されております。
酸分泌抑制薬には3種類あり、酸抑制力が弱いものから順に
・ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA) 商品名 ガスター、タガメット、アシノン、プロテカジン
・プロトンポンプ阻害薬(PPI) 商品名 パリエット、タケプロン、ネキシウム、オメプラール
・カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB) 商品名 タケキャブ
胃癌のリスクとしてはH2RA<PPI≒PCABとの報告でした。
このようなデータがでた以上、症状もないのに酸分泌抑制剤を飲み続けるのはよくないですし、我々医師も漫然と処方しないように気を付けなければいけないと痛感いたしました。
とはいえ、長期内服が必要である患者様もたくさんおられます。難治性の逆流性食道炎の患者様や、症状はなくても抗血栓薬を内服されている患者様やステロイドを内服している患者様などは酸分泌抑制剤は長期にわたり必要になってきます。
こういった方に対してはより一層、内視鏡のフォローが重要になってきます。たとえ胃癌が発生しても早期であれば治癒可能です。できるだけ早期に発見ができるよう、1年1回の内視鏡をしっかりと受けることが望ましいと考えます。また酸分泌抑制剤を飲んでいなくても、ピロリ菌除菌後の方は1年に1回の内視鏡検査が推奨されます。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人