急性膵炎
- 2024年11月26日
- 膵疾患
こんにちは。今回は急性膵炎についての説明になります。
怖い病気、重症化しやすい病気としては有名ですが決して頻度は多くありません。
急性膵炎というのは膵臓の内部やその周囲におこる急性炎症のことです。膵臓は膵液という消化酵素を分泌しております。膵液は膵管という管を通り、十二指腸の乳頭から分泌され消化酵素として活性化し食べ物を消化します。しかし何らかの原因で膵管内に膵液がとどまることで膵管内圧が上昇し、膵内で活性化されることで膵自身が消化され、膵炎を発症します。
原因として多いのがアルコールと胆石です。これらで70%ほどを占めますが、その他では薬によるもの、脂質異常症(中性脂肪が500以上)、先天的な膵管の走行異常、内視鏡検査(内視鏡的逆行性膵胆管造影検査)によるものなどが挙げられますが、原因不明のものもあります。また慢性膵炎からの急性増悪という場合もあります。
胆石が原因となる理由ですが、胆管と膵管の解剖的な関係性によります。肝臓でつくられた胆汁という消化酵素は総胆管という管を通過し、十二指腸の乳頭という出口から排出され食べ物を消化します。総胆管の途中に胆のうという袋があり、胆のう内部に胆石が発生します。その胆石が胆のう内から総胆管に落下し、それが十二指腸の乳頭に詰まる(総胆管の乳頭部は狭くなっているため)ことで、乳頭に開口している膵管の出口も同時に圧迫され、膵液の流れが止まり膵管内圧が上昇して発症します。アルコールに関しては、どういう機序で膵炎を引き起こすのかは十分解明されておりません。男性は60歳代、女性は70歳代が多く、比較的男性に多い傾向があります。
症状は最も多いのが急で激しい上腹部の痛みです。背部に痛みが広がることもあります。嘔気や嘔吐、発熱、黄疸を伴うこともあります。状態が増悪すると意識障害やショック状態などに陥ることもあります。
診断は症状、血液検査、画像検査を組み合わせて行います。症状は上腹部痛があった上で、血液検査などで膵酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の上昇、CT検査などで膵臓や周囲の炎症を確認することで診断します。急性膵炎は重症度の評価が重要になります。全身状態(バイタルサインなど)、血液検査で重症度を評価する項目、画像的な炎症の広がり具合で評価します。ただ急性膵炎は刻々と状態が変化するので、最初だけではなく経時的に繰り返し重症度を評価していきます。
治療の中心はまず点滴による循環動態の維持です。膵炎の炎症効果により、全身の血管内の水分が減少(血管内脱水)が生じ、臓器障害を来します。そのために大量の点滴を行い、血管内の水分を確保し、臓器障害を防ぐ必要があります。膵も刺激せず安静が必要なので絶飲食となります。疼痛管理も重要ですので痛みには鎮痛剤を使用します。また状況に応じて膵臓の酵素の分泌を抑える薬剤(膵酵素阻害剤)や膵臓周囲の感染を防ぐための抗生剤投与が行われます。
軽症~中等症であるとこのような治療で快方に向かいます。しかし重症の場合は重度の感染症が合併したり、多臓器不全で腎臓や呼吸機能の低下を来たし、血液透析や人工呼吸管理を含めた集中治療室での治療が必要になることもあります。膵炎が命に係わる病気というのはこのためです。重症膵炎の中でも特に壊死性膵炎や感染性膵壊死といって膵やその周辺組織に壊死(腐敗すること)を起こして感染を伴った場合は非常に治療に難渋します。軽症膵炎の死亡率は0.8%くらいに対して、重症膵炎は10%程度とされています。近年の医学の進歩により重症膵炎の予後はよくなってきております。
このように急性膵炎は急激な経過で発症します。症状の強さは程度がありますが、強い場合には独歩で歩いて受診するというのが難しく、救急車などで救急病院を受診するケースが多いと思われます。当院では今のところ独歩でこられて急性膵炎が疑われた患者様はほとんどおられません。当院では急性膵炎を疑がったら、院内でできる血液検査で炎症反応や膵酵素を測定し、膵炎らしいかを確かめます。疑わしければCTなどの画像検査が必要になってきますので、入院加療も含めまして病院の方へ早急にご紹介いたします。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人