大腸憩室炎、憩室出血
- 2024年11月20日
- 大腸憩室症
こんにちは。今回は大腸憩室に伴う疾患のお話です。(前回から更新して再掲載です)
大腸憩室とは大腸の壁の一部が外側に突出し、嚢状(袋状のこと)になった状態をいいます。非常によくある病気で、40歳以上の中高年者に憩室はできることが多く、日本では右側の大腸(盲腸~上行結腸あたり)に多いといわれております。加齢によって進展し、S状結腸にも増加するとされています。このように憩室は単発ではなく多発する傾向があります。原因として腸管内圧のバランスが崩れることでできると考えられております。高齢化や食生活の変化により便秘の頻度が高まり、糞便を送り出すための腸管運動が亢進することで腸管内圧が上昇します。その結果、圧に耐えられなくなった腸管壁の一部が外側に膨らむことで憩室ができます。特に食物繊維が不足している方に多い傾向にあります。大腸憩室はそれが存在するだけでは無症状ですが、しばしば炎症を起こしたり(憩室炎)、出血したり(憩室出血)することがあります。
・憩室炎
憩室に糞便がたまったまま長時間経過すると、内部で細菌が増殖し、憩室内に炎症が起こった病態をいいます。症状は腹痛が主体で感染した憩室の場所やその周囲に痛みが生じます。発熱や下痢、嘔吐を伴うこともあります。食中毒などの感染性腸炎や虫垂炎との鑑別が重要となります。
重症になると膿瘍(膿が貯留した腫瘤)ができたり、強い炎症により穿孔(穴があく)を起こし腹膜炎を呈することもあります。
診断は血液検査やCTなどの画像検査で診断いたします。血液検査では白血球が上昇したり、CRPという炎症反応が上昇します。CTでは炎症をきたしている憩室の周囲の壁が肥厚したり、周囲の脂肪織濃度の上昇がみられます。炎症が軽い場合は腸管安静と抗生剤投与で改善いたします。症状が強かったり、発熱などの全身症状が出現したりと炎症が強い場合には、入院の上、点滴加療が必要となります。ただ上記のように膿瘍形成したり、穿孔したりすると経皮的ドレナージ(膿を体外へ排出する処置)や手術が必要となることもあります。
一度治っても再発しやすい疾患ですので、注意が必要です。
・憩室出血
憩室内部の血管が破綻することで大腸内に出血を起こします。突然の血便で発症します。憩室炎と違い腹痛や下痢、発熱はありません。基本的には鮮血~赤黒い血であり、出血量は多いです。リスクとして高いのは高齢者、解熱鎮痛剤・抗血栓薬を使用している場合で注意が必要です。診断としては腹部~骨盤部の造影CTや大腸内視鏡で診断します。ただCTでは活動的に出血があり出血量もある程度多くないと出血源がわかりません。大腸内視鏡は直接観察するので出血源の診断だけではなく、そのまま止血処置も可能です。
多くの場合は絶食、腸管安静で自然に止血されます。しかし大量出血をした場合や、出血が止まらない場合、一旦止血されても再出血を繰り返す場合には大腸内視鏡による止血を行います。ただ内視鏡で観察時には自然止血されており、出血源がわからないことがよくあります。血便がみられてから24時間以内に大腸内視鏡検査を実施しても、出血している憩室を同定できる可能性は20~40%といわれております。出血している憩室を発見できた場合には主にクリップで機械的に憩室を挟んで止血する方法が最も安全で有効です。また大量出血でショック状態にある場合では内視鏡検査は危険ですので、腹部血管造影検査を行い、活動性出血を確認し血管塞栓術をで止血をすることもあります。
憩室は消化管で様々な部位にできますが、大腸憩室が最も多いです。普段大腸内視鏡をしていてもよく見つかります。憩室を持っている方は上記の憩室炎や憩室出血の可能性は多かれ少なかれございます。またはっきりとした発症の原因はわかりません。これはそうかもと思いましたら、診察に来ていただければと思います。憩室炎を疑い軽症と考えられたら、外来治療可能ですが、中等度以上でしたら入院加療が望ましいので、病院へご紹介させていただきます。また憩室出血が疑われましたら、一旦自然止血を待ちますが、大量出血や出血が続くようなら、こちらも入院での処置が必要ですので病院へご紹介させていただきます。
豊中市西緑丘3丁目14ー8
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人