下血（肛門からの出血する病態）：１ 血便
- 2025年12月26日
- 消化管出血
こんにちは。今回は消化器内科では受診理由が特に多い肛門からの出血症状についてご説明します。
一般的に肛門から出血することを下血といいます。下血とは、消化管（口から肛門まで）のどこかで出血が起き、血が便として出る状態を指します。その中でも特に下部消化管（主に大腸）から出血している状態が血便といいます。逆に上部消化管（食道、胃、十二指腸）から出血している状態がタール便・黒色便となります。単に用語だけの問題ですが、吐血の反対が下血となり、下血の中に血便やタール便・黒色便が含まれます。
以下のように出血している場所によって、便の色が変わります。
① 鮮やかな赤い血（血便）
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肛門や直腸・大腸の出口近くからの出血が多い
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便の表面に血が付く、トイレットペーパーに血が付くこともあります
② 暗い赤〜黒っぽい血（血便）
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大腸の奥の方や小腸などからの出血の可能性
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便に血が混ざっていることが多い
③ 黒いタール状の便（タール便・黒色便）
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食道や胃、十二指腸など上部消化管からの出血
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血液が胃酸により酸化されることで真っ黒となります
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医療的に注意が必要なサインです
大きく分けて出血が赤っぽいのか真っ黒かで判断していただいて結構です。次に血便とタール便が出現する疾患を考えていきます。
血便：代表的な鑑別疾患（原因）は以下となります。それぞれの簡単な特徴を致しますので、ご自身の症状が当てはまるかご確認ください。
① 肛門疾患
・痔核（いぼ痔）
・裂肛（切れ痔）
特徴
肛門からの出血は鮮やかな赤色の出血です。痔核には外痔核と内痔核があります。外痔核は肛門の外側にでき、強い疼痛を認めることが多いです。内痔核は肛門の内側にでき、痛みはないことが多いです。これらは出血量が多いときもあります。
裂孔は排便時に肛門痛を認めることが多いですが、出血量はそれほど多くありません。（紙につく程度）
②大腸の炎症性疾患
・感染性腸炎
・潰瘍性大腸炎
・虚血性腸炎
特徴
感染性腸炎は食中毒のことです。下痢や腹痛、嘔気・嘔吐、発熱が主症状であり、出血はそれほどよくある症状ではありませんがあり得る症状です。特に原因菌がO-１５７などの腸管出血性大腸菌が原因の場合は出血は顕著です。
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜が慢性持続的に炎症を起こす疾患です。発症は若年者（１０-３０歳台）が多く少量の出血が続きます。（数か月単位）また慢性的な腹痛、下痢も伴います。
虚血性腸炎は何らかの原因で大腸粘膜への血流障害が生じ、炎症を起こすことで腹痛が出現し、血流不足による粘膜障害により上皮が剥がれ落ちて出血する病態です。特にお腹の左側から下腹部にかけて痛みが出現し、それから血便（下痢を伴うことも多い）がでたらこの疾患を疑います。出血量は多いこともあります。宿便の停滞による圧迫で血流障害が起きやすいので、便秘がちな方に多い疾患です。
③ 腫瘍性疾患
・大腸ポリープ
・大腸がん
特徴
基本的に大腸ポリープ（良性）から出血するということはまず考えにくいです。ただ見た目で血が確認できなくても、大きいポリープなどは、便とこすれあうことで微小な血液が付着し、便潜血検査で陽性となることはあります。
大腸がんも初期には無症状ですので、早期癌から出血するということは考えにくいです。ただ進行癌となると出血は十分あり得ます。少量の出血が便に混じって長期間にわたり出現する場合には要注意です。（年齢は特に60代以降の方）その他の症状としては便が細くなった、便が出にくくなったなどの便通異常や限局的な腹痛、腹部腫瘤といった腹部症状、体重減少や食欲不振といった全身症状も参考となります。
④ 血管性・その他
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憩室出血
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直腸潰瘍
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放射線性腸炎
特徴
憩室出血は大腸に憩室をもっている方で、ある時憩室の中にある血管が破綻して、突然、出血が出現します。出血量が多いことも特徴です。腹痛は全くありません。発症の年齢層は高めですが、憩室をお持ちの方はすべて出血する可能性があります。
直腸潰瘍は主に臥床傾向（いわゆる寝たきり状態）の方に出現します。仰向けでずっと臥床される方は、宿便が直腸内の同じ部位に留まることにより粘膜の血流障害を来し、潰瘍を形成します。こちらも出血量は多いことが特徴です。
放射線腸炎は前立腺がんや婦人科系のがん治療のために放射線治療を行った場合に出現します。主に直腸～Ｓ状結腸の照射を受けた粘膜からじわじわ出血が続くことが特徴です。
■ 血便の臨床的ポイント
特に繰り返す血便は、たとえ出血量が少量でも精査が必要です。ただ一過性の場合には様子をみることもあります。
主に大腸内視鏡検査が疾患の判断材料になります。
血便以外に随伴する症状にも注意してみるようにしてください。
確かに痔核は出血源としては多い疾患ですが、そうだと思い込まないようにしてください。
次は黒色便・タール便について説明いたします。
豊中市西緑丘３丁目１４ー８
みやの消化器内科クリニック
院長 宮野 正人